「これってさ 前編」(雑誌「言語5」掲載)感想

2018年5月25日金曜日

昨日、やっと言語5を読み始めた。まだ「これってさ 前編」(大谷隆)しか読んでないけどとりあえず感想。

一読して、内容よりも文体が気になって仕方ない。新話体というか、まあそんな感じ。話している感じで書いてあるので、読みやすいかと思いきや、全然読みやすくない。結構疲れる。こういう文章を読み続けていると、いつか読みやすい文章になるのかもしれないけど、新しさ故にか、いくら口語っぽく書こうと脳の普段使ってないところを使わされてる感じがして疲れてゆく。別に、だからいけないという気は全然無くて、読み疲れはするんだけど読んで行きたくなる。

読んで行きたくなる理由の一つに、保留されているということがある。これは書き言葉というより、話を聞いているときの感覚に近くて、この人は一体何を言おうとしているのか、というのがあまりわからないまま進んでいく。表面的には面白い小咄の連発があるので次へ次へと読める感覚もあるけれど、いやいやあんたなんか言おうとしてるでしょって雰囲気が消えないので、どこで突き当たるのかわからないこの人の思想が気になって読み続けていく。疲れて一旦雑誌を手放したときの感覚は話の続きを聞きたくなってちょっとそわそわするのに似てる。で、一応この「前編」の最後それっぽいことが書かれている。でも、でも、「前編」ってあるからには「後編」があるわけで(きっと)、でも後編へのさほどの予測も効かないまま宙ぶらりんにされる。

あと、引用の仕方がおもしろい。引用って言っていいのかって感じやけど、普通の論評ではみたことがない引用。人と話してて、誰々が何々って言ってたあれね、みたいな感じでやってくる。引用って自分でやると結構気を使うのが、さらっと書いてあってびっくりする。さらっと書いてあるからと言って、著者がどんな気分で書いたかは不明だけど、やっぱりびっくりする。

まったく内容に触れれないんだけど、雰囲気のインパクトは残る「これってさ」小説なの?

雑誌「言語」ホームページ。
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